流山市・野田市の市民版マスタープラン
流山市と隣接する野田市の市民版マスタープランを作成しました。どんなまちや環境が望ましいかを、仲間と一緒にまち歩きや話し合いを重ねつくりあげました。 マスタープランは、情報公開と住民参加を前提にし、心の豊かさに重点を置いたまちの将来像を提言しています。 まちを良くしたいという素朴な想いを、まちを最も良く知っている住民が専門家のアドバイスを受けながらわかり易い形にして提案していくことはとても大切なことだと考えています。 社会の流は、このマスタープランの方向に動いているような気がします。これからも、その提案内容についてしぶとく考え続けていきたいと思っています。
「こんなまちに住みたい」
玄関を出ると、それぞれが個性にあふれ、それでいて調和のとれた町並みが樹木に覆われて輝いてみえる。住宅の廻りにある遊歩道は段差や柵もなく、緩やかにうねり、子どもからお年寄りまでが徒歩や自転車で、また身体の不自由な人は車椅子で、楽しげに行き交っている。街路樹や草花が風にゆれて、トンボが街路灯の上でひと休み。歩道は弾力性のある材料で出来ており、広くなったり狭くなったり自然な曲線を描いている。
所々にまちの案内板があり、ベンチや緑台などが設けられている。くまさんのデザインの水飲み場のそばには、きれいなせせらぎがあり、子どもたちが水しぶきを上げている。このような自然な姿の遊歩道が、市内を一巡できるほどのつながりを持って続いている。また市内のあちこちに、トンボ池や湧水小公園が配置され、かたわらの小川には魚が群れ泳ぎ、その魚をねらう美しいカワセミが、水面すれすれに飛んでいく。 まちの中心には、市野谷の森県立公園のクヌギ、コナラやスギなどの樹冠が波打ち、その上空をオオタカのつがいがゆっくりと旋回している。 森の周囲にはオオタカが巣づくりをしたり、自由に飛びまわれる林や田畑が広がっている。ここを中心に緑のネットワークが市内に広がる。常磐新線の高架側面は、多くの植栽で覆われ、緑の帯となり、周囲の景観に溶け込んでいる。
わたしたちは、こんな住環境に住みたいと願っている。人口が増え、ビルが林立することが発展だなどと、決して思わない。
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みんなで考えた「野田市の市民版まちづくりプラン」の「はじめに」の内容です。
「はじめに」
「幸せ」って・・・ どんな時に感じますか?
例えば、家族団らんのとき? 友達や恋人と一緒のとき?
散歩やスポーツ、趣味を楽しんでいるとき? 美味しいものを食べているとき?
それとも住んでいるまちの通りやお店で、人々とのふれあいのとき?
それは、人さまざまですね。でも誰もが思うことは、心豊かな温もりを感じ、ゆったりと落ち着いた気分で、充実感に溢れているときでは
ないでしょうか。そして、そのようなことが、今住んでいる身近なまちとさまざまな面で関わり合っていることに気づかれるでしょう。
スピードや効率も大事なことだと思いますが、それよりも「ゆとり」のほうが大切な気がします。
「物」ではなく「心」の豊かさを中心に据えて、どんなまちや環境が望ましいかを、仲間と一緒にまち歩きや話し合いを重ね、
野田の「まちづくり」について考えてきました。話し合いをしていくなかで、やっぱり自分達のまちは自分達の手で、自分達の身の丈に
合ったまちづくりを目指していくことが必要だと感じました。
これからのまちづくりの考え方は、新規開発よりも、再開発、再整備、再発見、再利用というような、既存のいろいろな財や資源を大切にし、
それを効率よく活用するということがキーポイントになります。それだけに地域住民の暮らしに密着した取り組みが望まれます。そのためには
市民の役割も大きく、自らもお互いの思いを話し合う場をつくり、長期的・広域的・総合的な観点から検討し、意見を言うだけに留まらず、
身近なことで自分達にできることから責任と義務を持った行動に移していく必要があると思います。そして、公・民のパートナーシップを基本に、
行政や事業者と良い関わりを保ちながら、共に学び、育み、確認や見直しまでできる継続性のある、分かりやすい仕組みをつくっていくことが
必要だと思います。
サラリーマン、自営業者、リタイアした人、主婦や学生など、その専門性や世代もさまざまな幅広い一般市民が集い、ここに
「のだ・まちづくりプラン」をつくりました。市の総合計画や都市マスタープランに、私たちの提案が生かされることを願っています。
この小冊子をもとに、将来のまちづくりというようなちょっとお堅い話を、お茶の間や学校で、気楽な話題にしたり、お店でお酒でも酌み交わしながら、仲間同士のより豊かなコミュニティづくりに役立ててもらいたいと思います。
居心地のいいまちにしていくために、市民一人ひとりの意識や行動の変化が、その周囲の人や社会を動かし、市民と行政と事業者が協働し、新しい意識とビジョンの拡がりに一石を投じることになれば幸いです。
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「市民版まちづくりプラン」
は、写真やイラストを多く取り入れ、
イメージが沸きやすい内容になっています。
暮らしやすいまちをつくっていくためには、行政の政策立案段階から市民の意見やアイデアを受けとめる仕組みが
きちんと担保されている
ことが不可欠です。
市民が責任をもってまちづくりに参加するには、充分な行政情報の公開と学習が不可欠です。
市民と行政がこれらを共有したうえで対話をしながらすすめていくことにより、個性的な市民感覚に沿ったまちづくりができると考えています。
情報の公開と市民参加の仕組みをつくろう!
●各種審議会などの情報公開と市民参加
政策立案段階での議論に市民が公平に参加できるように
☆市民参加条例をつくり以下のような点を盛り込む
・公募市民を50%以上とする
・会議は公開を原則とする
●市民のまちづくり活動の育成・支援
市民が主体的にまちづくり活動を行えるように
☆市民活動まちづくり条例をつくり、以下のような点を盛り込む
・市民活動を醸成していく(市職員による出前講座など)
・市民活動の支援(財政支援や専門家の派遣など)
・市民活動で出された成果や提案をしっかりと受けとめる仕組み
づくり
●市の窓口や市長への手紙などで出された市民意見を受けとめる仕組み
・日常的に市民が出した意見や苦情などについて、どこでどのように
処理されているのか、これらの意見の内容と対応について公開する
●市のホームページに電子会議室を
・市からの一方通行のお知らせだけではなく、市民が意見や
アイデアを寄せられるコーナーを設ける
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ダムに頼らない「くにづくり」
国土交通大臣が無駄な公共事業を廃止することやマニフェストに明記したことを理由に八ツ場ダムなどのダム事業の中止を発表し、地元や流域自治体の知事などから大きな反発を受けています。
民主党の言われるお金の使い方を「コンクリートから人へ」という考え方はそのとおりだと思います。しかし、50年以上に渡って続けてきた事業をこのような理由で中止することは、乱暴すぎるやり方だと思います。 長年苦労されてきた地元の方や国民の納得を得るためには、もう一度原点に戻り、本当にダムが必要なのか、ダムに頼らない手法はないのか、わかり易いデータなどを提示し、流域全体で考えていくプロセスを明示することが、まず必要なことだと思います。
ダムに象徴される大型の公共事業は国民の目の届かない形で進められ、その結果として族議員による利権などが生まれました。このような事業形態は国、地方合わせて800兆円を越す借金の原因ともなっており、この発想を国民一人一人が根本から変えていく必要があると考えています。
このような考え方をふまえた上でダムに頼らない環境治水の手法は出来ると思います。流域全体で一丸となって治水や利水について専門家を混じえ、地域を一番よく知っている住民も参加してじっくり話し合いを重ねていけば、保水力を高めるような環境型のまちづくりを進める様々なアイデアが生まれてくると思います。
ダムに頼らないことを進めていくための具体的な手法として、まず流域全体の土地利用や河川の状況を綿密に調査します。その調査結果を基にIT技術を駆使し、雨量と時間、保水力の関係を明確に解析します。 各自治体はこれらの解析資料を参考にしながら保水力を高めていくような「まちづくり計画」を示していきます。このようなプロセスについても十分な参加と情報公開をしていくことは言うまでもありません。
保水力を高めたり、洪水を防ぐ手法の事例は多くあります。透水性の舗装や調整池、田んぼを活用した遊水池、保水力が高い雑木林の保全、水害防備林の活用などその地域に合った手法を組み合わせていきます。このような取組みにあたっては必ず多様な生態系を守り、さらに高めていくことも重要な視点になります。
大きな被害が出る堤防の破堤は防がなければなりません。鋼矢板と地盤改良を組み合わせた堤防補強など様々な手法を検討し、堤防形状を大きく変えずその場所に合った堤防強化をしていく必要があります。
ダムに変るこのような取組みは、長期的に見れば地球温暖化を防ぎゲリラ豪雨対策にも役立ち、農地の再生にも繋がり景観も高まっていくと考えられます。このようなプロセスを経た事業であれば、現在とても厳しい地方の建設業も地域に役立つことを実感しながら取組んでいけると思います。
大きな事業ではありませんが、このような取組みにより地域の中でコミュニティやネットワークが広がりながら小さなお金がクルクル回る社会をつくりあげていくことが結果として良い「くにづくり」の方向に向かっていくと確信しています。
これまでの治水と環境治水の水循環を比べたイメージ図
出典:柏市役所土木部治水課(柏市環境治水基本計画リーフレット)
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東日本復興構想の絵図面
絵図面は東日本の被災地の典型として代表的な地形をモデルに作成しました。
土木の専門性の視点から写実的な内容と共に軟らかさや温かさ、親しみやすさなどの気持ちが伝わりやすいように手づくりで作成し、
誰でもが分かりやすい絵図面としました。
これから進められていく復興のまちづくりが経済中心主義から心の豊かさやコミュニティを重要視する社会になり、全国へ広がって
いってほしいと考えています。
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まちづくりのながれ
○ 住民の全員参加
○ 期日を決め、専門家と共に学習
○ まち相互の情報の共有
○ 複数案の中から住民自らが決める
安全・安心
・ 「10分間てんでんこ」作戦
(10分間の間に安全な高台、建物へ個人個人の判断で避難する)
・ 避難放送は時間を明確に伝える。
・ まちの中に大きな時計を設置し、時間が分かるようにする。
・ 東日本大震災跡地をつくり後世に伝える。
・ 津波高を標示したものを設置する。
・ 展望台を兼ねた非難タワーを設置する。
・ 避難しやすいように幅の広い道路をつくる。
・ 建物は6階(18m)以上とし、津波による被害を少なくするために側面を海側にする。(条例で定める)
・ 盛土により堤防を兼ねた道路をつくる。(コンクリートがれきの活用。鋼矢板で盛土倒壊を防ぐ)
・ 被災者の体験の聞き取り、分析を行い、自分達のまちに合った安心・安全対策をさぐり出していく。
まちの造成計画
・ 山を削り高台に住宅、役場、学校、病院、公共施設、商業施設等を移転する。
・ 平地は、削った土で農地を整備する。(明治時代の古地図を参考にする)
・ 平地に山のみどりの代替緑地をつくる。(郷土の樹種を密植させ、斜面林と一体となった森を早期につくる)
・ 低コスト代替策や資材の再利用の工夫などの検討を行なう。
防潮堤
・ 震災前と同程度の高さの防潮堤を復元する。
・ コンクリートのがれきを活用する。
・ 鋼矢板を打ち込み倒壊を防ぐ。
産業(地場産業を盛りたてる)
・ 農業:生産・加工・調理・包装・販売を取り込んだ形態をつくる。(若者を呼び込める魅力ある農業を目指す)
・ 漁業:漁獲・加工・販売を一体化する。(元気な海をもう一度)
・ 林業:伐採樹木を住宅建設に活用。緑地の植林。
・ 建設業:まちの造成工事は地元の建設業者が行なう。
・ エネルギー産業:太陽光・潮力・中小水力・地熱・風力など風土にあった自然エネルギー産業を興す。
(建物の上に太陽光パネルの設置、エネルギー発信拠点をつくる)
エネルギー政策
・ 脱原発によりエネルギー政策を転換する。老朽化したものは廃炉とし、新たな建設は行わない。
・ 国民の意識改革、自然エネルギー、省エネ技術により原発を無くしていく。
景観・環境
・ もう少しで桜が咲く頃におきた震災に思いを込め、高台から見える場所に住民の手で桜を植える。
・ 建築物は、周辺環境と調和した低層・アースカラーを基本とする。
・ 川の堤防は土手にする。
財源
・ 国民の合意のもとに、復興国債の発行と、復興税を創設する。
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